はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

二葉亭四迷=浮雲という知識だけではもったいない 二葉亭四迷「浮雲」

こんにちは。 文章難しいけど一気読みでございます。二日で読みましたよ、二日!!! 大変はすっぱな表現ですが、一言でいうと、なんか超むかつく小説。 主人公文三は、幼くして養子に出されて、叔父の家で育てられます。そこにはいとこのお勢がいて、文三が…

お姉さん×海×おっぱい 多感な男子を虜にする 森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」

こんにちは。 森見登美彦作品の中で、個人的には森見登美彦っぽくなくてイマイチじゃない?と思っているのがこちら「ペンギン・ハイウェイ」しかし、周りの男性陣「俺これ一番好きだわ~」という人が結構いるんです。昨年映画化されたらしく、こちらも早く見…

闘病をテーマにしたものでこれを超える映画にはなかなか出会えない 映画「マイベストフレンド」

こんにちは。 原題「Miss you already」。邦題は「マイベストフレンド」です。 乳がんとの闘いをテーマにした作品ですが、演技も構成も、闘病ものとしては一級品の出来。Miss you alreadyは別れ際の挨拶で「まだ一緒にいたいわ」という感じかな。個人的に原…

安酒と煙草と無駄にした日々と 村上柴田翻訳堂「卵を産めない郭公」

こんにちは。 昨日のYAに関連して、大人への第一歩を踏み出す男の子の話。新潮文庫が、村上柴田翻訳堂という新訳・復刊の取り組みをしていまして、そのうちの一作です。訳は村上春樹。ハルキスト必読の著です。舞台は60年代アメリカのカレッジ。シェリーとい…

すっかり忘れていた高校生の思考回路を思い出す ヤングアダルト小説「エブリデイ」

こんにちは。ご紹介するのは、ヤングアダルト小説「エブリデイ」です。 ヤングアダルト(YA)小説っていうジャンル知ってましたか? 私は実はこれを読むまで知らなかったのですが、図書館にもYAコーナーができていて、冒険譚やファンタジーばかりの児童書で…

実は世界の100冊にも選ばれている 川端康成「山の音」

こんにちは。 今日は古典の日です。 川端康成「山の音」川端康成作品の中でも実はかなり評価が高い本作品。テーマは「日本古来の悲しみ」と明言されております。自営業の信吾は、妻の保子、息子の修一、その妻の菊子と同居中。修一は不倫しており、夫婦仲は…

安部公房テイスト。お隣の部屋を覗く話 アンリ・バビュルス「地獄」

こんにちは。 絶版で入手困難なこちら。 個人的にはドラマ化してほしいくらい面白かった本です。 江戸川乱歩とか安部公房とか好きな人は絶対はまるやつ。 下宿宿でお隣の部屋を覗き見する話。 これだけで変な妄想をするにはもってこいの題材でしょう?パリで…

自分の犯した間違いの結果を引き受けていく勇気 早川書房「海を照らす光」

こんにちは。 早川書房の「海を照らす光」2016年に映画化されました。 灯台守であるトムと彼を取り巻く人々の数十年に亘る物語です。無学な私は、灯台守なんていう職業を初めて知りました。無人島に家族で住み、灯台の光を灯し続ける仕事だそう。なにそれ私…

親子は必ず分かり合えるという幻想 映画「三月のライオン」

こんにちは。 今日紹介するのは、こちらの映画です「三月のライオン」 原作はまだ続いているのですが、ある程度のところまで前後編にまとめてあります。後編はかなりオリジナルストーリー。 まずはこの映画、神木くんのコスプレ映画として見ても良いでしょう…

人生は奇跡と現実の甘辛ミックス 新潮クレスト「トリック」

こんにちは。 今日紹介するのは、新潮クレスト・ブックス「トリック」です。 私は外国の人の顔とか名前を覚えるのがクソ苦手なんです。なので、普通は「伊坂幸太郎の『死神の精度』です」って紹介するところを、海外文学だけは「新潮クレスト・ブックスの『…

信じたのか、受け入れたのか 「セーフ・ヘイブン」

こんにちは。 「セイフ・ヘイブン」ラブロマンスでもありサスペンスでもあり、不思議な映画でした。 女が警察に追われるシーンからはじまる本映画。最後の最後まで、本当に気が抜けません。ハートフルな映画と思って見始めたのに手汗すごいw うわー!みつか…

子どもを本好きに育てたい!という観点から読む「書店主フィクリーのものがたり」

こんにちは。 私もそうですが、子どもには本好きになってほしいと思っている親御さんはたくさんいるのではないでしょうか。想像力が養われるし、物知りにもなるし、孤独の慰めにもなりますね。本の存在に助けられたことは数知れず。 子どもはどうやったら本…

ひとりぼっちだから本を読む、ひとりぼっちじゃないことを確かめるために本を読む ハヤカワepi文庫 「書店主フィクリーのものがたり」

こんにちは。 こちらは2016年の本屋大賞(翻訳小説部門)で大賞をとった「書店主フィクリーのものがたり」です。 本屋大賞に翻訳小説部門があったの知らなかったw さて、タイトルの言葉、じんときますよね。ここのくだり、わたしもすっごく語りたいのですが…

夢ってなんだ、人生ってなんだ 田山花袋「田舎教師」

こんにちは。 自然主義文学の話で一度触れた田山花袋の登場です。「田舎教師」 いい!田山花袋は、写真を見ると、満足感と自信にみちあふれた顔してるから、深~い、暗~い小説を書くイメージがありませんでしたが、「田舎教師」、「重右衛門の最後」の二作…

クソ母に胸糞悪くなること請け合い モーパッサン「ピエールとジャン」

こんにちは。 最も好きな作家は「モーパッサン」。 私的には冷遇されていると感じる作家の一人。 ゾラもそう。今手に入るのは「女の一生」「脂肪の塊」「ベラミ」くらいで、もう少し多くてもいいのになぁと思っています。 フランス自然主義文学は、ゾラとモ…

【6月映画公開】共依存に依存症。毒親の親はだいたい毒親 「ガラスの城の約束」

こんにちは。 「ガラスの城の約束」つづきです。 dandelion-67513.hateblo.jp 「毒親の親はだいたい毒親」これ。 以前は本作品の母親(ローズマリー)と父親(レックス)がどんだけクズ親かを書いたと思うのですが、今回は親の親。祖父母がどんな親だったか…

山よりも高く海よりも深い母の愛 映画「私の中のあなた」

こんにちは。 大ベストセラーになった小説の映画化です。「私の中のあなた」 私は映画を見る前に予告を見たくない人です。「全米が泣いた」とか「この夏最高の」とか「涙が止まらない」とか平気で言っちゃうし、結論を誘導してくるし、何より予告が一番おも…

夫と喧嘩できますか? 映画「かぞくはじめました」

今回ご紹介するこの映画、日本では公開中止になった作品で、あまり知られていません。 原題は「Life as we know it」です。私たちが知っている人生?…人によって解釈が違うこの言葉ですが、「かぞくはじめました」はどうかな?冷やし中華か。 最近映画見ると…

アフリカに行きたいと思っている人??「アフリカの日々」

さて今日は、「アフリカの日々」(河出書房)を紹介します。 アフリカに行った気になれる素晴らしい本ください!という動機で買いましたw 都会の喧騒に疲れきっている私は、「雄大な自然に抱かれて暮らしたい」と日々思っています。満員電車とか嫌すぎるし、子…

【6月映画公開】魅力的な人間は過去に支えられている「ガラスの城の約束」

6月に映画公開するこちら。「ガラスの城の約束」ノンフィクション作品です。 さて、「魅力的な人間は過去に支えられている」これ、私が考えたわけではなく、謝辞っていうんですか、一番最初に出てくる挨拶みたいなの、あれに書かれていました。「BIG FISH」…

藤原竜也と伊藤英明に騙されたい 「22年目の告白-私が殺人犯です-」

こんにちは。藤原竜也と伊藤英明に騙されたい人はこちら。「22年目の告白 -私が殺人犯です-」 最後まで目が離せず、あー!ってなりました。舞台は現代。ある男が殺人を告白します。 その事件とは、22年前に起こった連続殺人事件で、すでに時効を迎えていまし…

長い人生のほんの些細な出来事を哀愁たっぷりに描く トム・ハンクス「変わったタイプ」

こんにちは。 今日ご紹介するのは、トム・ハンクスの短編集「変わったタイプ」です。 トム・ハンクスって、あのトム・ハンクスですよ。え!うそ!?みたいな驚きみたいなのは方々で目にしましたので、ここでは割愛しますw さて、海外事情に疎い私でも知って…

みんな心に「熱帯」を持っている「熱帯」森見登美彦

こんにちは。 本屋大賞候補作。続き。こちらは直木賞候補にもなりましたね。 これは、本探しの物語。主人公は昔読んだ記憶のある「熱帯」という本を探しています。若き頃、アラビヤ書店という屋台のような古書店で購入し、途中まで読んでいたのは覚えている…

普通の生活を取り戻すための哀しき戦い 伊坂幸太郎「フーガはユーガ」

こんにちは。本屋大賞の予想は当たりましたか? 私は、伊坂幸太郎の「フーガはユーガ」、森見登美彦の「熱帯」は既読だったので、どちらかが獲ってくれたらいいなと思いながらも、「まぁ、ツイッター等々の評価を見る限り、残念ながら『ベルリン(は晴れてい…

人は過去の自分を幸せにしながら生きている 映画「ビッグフィッシュ」

「私は英国王に給仕した」というホラ話で思い出した、映画「ビッグフィッシュ」のレビュー。 結構有名な映画で、何度も見たのですが、若い頃はあんまり好きな話ではありませんでした。 なんかこう、哀しげというか、共感できねぇなぁという。 主人公はウィル…