はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「何かを変えれば何かが変わるはず」というどこまでも他力本願な「救済」を求めた一家の悲劇と再生の物語 ハヤカワ・ミステリ文庫「エヴァンズ家の娘」

こんにちは。 ハヤカワ・ミステリ文庫「エヴァンズ家の娘」。 いろいろな賞を受賞しているだけあって、構成も、盛り込まれたテーマも素晴らしい!女系家族×さびれた湖畔の家(別荘)×何十年も前に起きた失踪事件という組み合わせに興味を惹かれないひとはい…

人が生きるということは、誰かにとっての何者かになるための道のりなのかもしれない。叶うならばその道を誰かと共に歩みたい。「Giv:その犬の歩むところ」

こんにちは。 2018年の本屋大賞で翻訳小説部門第3位の「Giv:その犬の歩むところ」。(1位は「カラヴァル」) 「犬」小説ということで、開始5分で泣かされる。泣きどおしの作品でした。 子ども・動物・ラーメン(グルメ)は、数字の取れる特集だということは…

親との不仲は子どもに厳しい生を強いることとなる。12歳少女の壊れやすい気持ちを描いた透明感あふれる小説。 村上柴田翻訳堂「結婚式のメンバー」(村上春樹訳)

こんにちは。 カーソン・マッカラーズ「結婚式のメンバー」。(村上春樹訳・村上柴田翻訳堂) 裏表紙の内容紹介には、「南部の田舎町に暮らし、日々の生活に倦む12歳の少女フランキーが、兄の結婚式で人生が変わることを夢見て奇矯な行動に出る」というよう…

ブルックリンのありふれた日常の中、パワフルな老人が人生の悲哀を掬い取ろうとする等身大のおとぎ話 ポール・オースター「ブルックリン・フォリーズ」

こんにちは。 ポール・オースター「ブルックリン・フォリーズ」 「サンセット・パーク」で目の覚める体験をし、「インビジブル」でう~んとなったポール・オースター3作目。すっごい期待して読み始めたんだけど、「サンセット・パーク」ほどの感動はなく、普…

ありのままの自分を認められない大人たちが、信仰の原点に立ち返る ハヤカワ・ミステリ文庫「ありふれた祈り」

こんにちは。 「ザリガニの鳴くところ」に続き、泣けるミステリ第2弾!(最近アタリが続いており、コチラも2020年で5本指に入りそうだけども…笑) ウィリアム・ケント・クルーガー「ありふれた祈り」です。 「あの夏の全ての死は、ひとりの子供の死ではじま…

原文に触れて初めて、私はシャーロック・ホームズに恋をした「MONKEY 探偵の1ダース」

こんにちは。 柴田元幸氏責任編集「MONKEY」第20号「探偵の1ダース」です。 私にとって雑誌とマスキングテープは集めるものという認識がありまして、こちらもややインテリアになりつつあるのですが(インテリアとしてもめちゃくちゃ優秀です)、ハズレもない…

無垢な頃の自分をどこかに見つけ出す短編群 トマス・カポーティ「誕生日の子どもたち」

こんにちは。 カポーティ「誕生日の子どもたち」です。 このブログで何度も触れていますが、私は村上春樹は苦手です。なんか好きになれない。作品というよりも、一部ファンのごり押し感が苦手。ハルキの複雑な世界観を理解できる自分マウントしてくる感があ…

自分が母親に捨てられた理由を、自然の法則に求めようとする少女の姿に泣く。ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」

こんにちは。 ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」 久々に、衝撃を受けた作品。本の紹介をしていると、結構軽々しく「衝撃の結末!」って言葉を使いがちなんですが、こちらはガチのやつ。残り1ページでこれかよ!!と読んで半日へこむレベル。20…