はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ナンバーワンを目指す気楽さとオンリーワンであれない地獄 朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」後半戦(ネタバレ)

こんにちは。 朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」後半戦。螺旋プロジェクトの肝である「戦う理由」についてです。 前半戦はこちら dandelion-67513.hateblo.jp 今回いつでもどこでも誰とでも戦いまくっているのは、堀北です。彼は、目に見える/見…

皆誰かの生き方を必死になって真似ている 朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」前半戦(ネタバレ)

こんにちは。 螺旋プロジェクト、ついに最後になりました! 螺旋プロジェクト平成編。朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」 朝井リョウの名前は初めて聞いたのですが、「桐島、部活~」とか、「何者」とか作品のほうは知っていました。映画は見たこと…

照れやの女より恥ずかしがり屋の女のほうが100倍お得である コレット「青い麦」

こんにちは。 「シェリ」で有名なコレットの「青い麦」。新訳が出たので読んでみました。 「シェリ」は、元高級娼婦のレアと、シェリ(わたしのかわいい子)と呼ばれる青年フレッドの長い交際を描いたもので、心理描写や当時の風俗の描写が巧みで高い評価を…

面白いんだけど非現実演出のための小道具が過剰すぎて集中できないミステリ 恩田陸「黄昏の百合の骨」

こんにちは。 もともと知名度は高かったものの、蜜蜂と遠雷で一気に大御所感が出た恩田陸初期の作品「黄昏の百合の骨」。「三月は深き紅の淵を」「麦の海に沈む果実」「黒と茶の幻想」三部作の関連作品。不思議な雰囲気が漂っています。 女子高生の理瀬は、…

夜中に目が覚めたとき襲われる猛烈な不安を一日中抱き続けた土曜日 新潮クレスト「土曜日」

こんにちは。 ある脳神経外科医の一日をつぶさに書いた作品。夜中に目が覚めたとき、そして寝付けない夜、私たちの心を支配するのはネガティブな感情です。怒り、不安、孤独感、混乱… 土曜日の朝4時に目覚めた脳神経外科医の主人公は、床につくまでの間、実…

自分が作り出した妄想の人物ですら、自分の人生を彩る存在だと考える 新潮クレスト「ディビザデロ通り」

こんにちは。 新潮クレスト「ディビザデロ通り」 結論から言うと、「人生はコラージュ。それまで出会ってきた人たちを抱えて人は生きている」というテーマの話です。連続短編集の趣で、前半はクレア、アンナ、クーペという三人の若者の半生が切れ切れに。後…

決して結ばれることはない海族・山族の恋の行方は? 薬丸岳「蒼色の大地」

こんにちは。 螺旋プロジェクトも残り2作品となりました。明治の巻。薬丸岳「蒼色の大地」です。 時は明治。日本に海軍が創設されて間もなくの頃です。呉とか横須賀とか、そういう港町が舞台。時代はもう少し先ですが、「この世界の片隅で」で見た風景を思い…

じいちゃんの補正された思い出話を延々聞かされるという苦行 新潮クレスト「海に帰る日」

こんにちは。 2005年ブッカー賞受賞作、新潮クレスト「海に帰る日」です。 年老いた男マックスが、人生を回顧する物語。彼の心の中には、亡くしたばかりの妻アンナと、初恋の相手クロエの二人がいましたが、妻を失った今、彼の心はクロエとの思い出の地に引…