はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

無軌道にポジティブ思考を発動する奴に気をつけろ ヴォルテール「カンディード」

こんにちは。 思想家として超有名なヴォルテールの「カンディード」という作品です。風刺作家との一面も持っていたヴォルテールの幕間劇みたいなものでしょうか。 世界の100冊に選ばれておきながら何度も断念していましたが、新訳が出たとのことで何度目の正…

田舎町で起きる奇怪な殺人事件。全ての動機ある容疑者と大きな秘密。王道・Classic・本格ミステリ ヘレン・マクロイ「あなたは誰?」

こんにちは。 ヘレン・マクロイ「あなたは誰?」を紹介します。海外ミステリは一つ読むとどんどん他のを読みたくなるので、慎重に避けている私です。 あるものが好きで好きでたまらなくて、抜け出せない状態に達することを「沼にはまる人」と呼ぶそうです。…

価値観・将来展望のすり合わせを怠ったまま結婚した若い二人が直面する初夜という現実 新潮クレスト「初夜」

こんにちは。 衝撃の作品と紹介されていましたが、その名に恥じぬ衝撃っぷり。新潮クレスト「初夜」です。タイトル通り初夜の話。初夜の大失敗により離婚に至る夫婦の話です。 舞台はイギリス。第二次世界大戦後の混乱から立ち直り、国が豊かになっていく時…

未来を救うのは過去の記録。面白い本を大切に。 吉田篤弘「天使も怪物も眠る夜」

こんにちは。 螺旋プロジェクト未来編 吉田篤弘「天使も怪物も眠る夜」です。 約60年後の東京の話。東京は大きな壁で二つに分断されています。東京には不眠症が蔓延し、睡眠導入にふさわしい本、いわゆる全く面白くない本が流行し、 夜を徹して読んでしまう…

未来を望めないとわかったとき、人が求めるのは時計の針を過去の幸せな日々に戻すことなのかもしれない。ユーディト・W・タシュラー「国語教師」(集英社)

こんにちは。 今年6月に発売されたユーディト・W・タシュラー「国語教師」。2014年のフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)の長編章を受賞した作品。江戸川乱歩賞みたいなものかな? 推理小説の分類に入ってはいますが、手掛かりを得て、推理…