はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

実は世界の100冊にも選ばれている 川端康成「山の音」

こんにちは。
今日は古典の日です。
川端康成「山の音」

山の音 (新潮文庫)

川端康成作品の中でも実はかなり評価が高い本作品。テーマは「日本古来の悲しみ」と明言されております。

自営業の信吾は、妻の保子、息子の修一、その妻の菊子と同居中。修一は不倫しており、夫婦仲はぎくしゃく。そんな中、娘の房子まで出戻ってくる。
信吾は、菊子がわざと自分に甘えていること、そして、それを保子と房子がよく思ってないことを知っています。そして、修一が親と同居することに気詰まりしていることにも気づいています。信吾は修一夫婦に別居を提案してみるが、なかなかうまく進まない。

戦後の日本。家族同居というパターンばかりではなく、核家族という選択肢も生まれつつあった時代ですが、作品中の言葉で言うと「ずるずるべったり」な関係が続いてしまう。一般的には年寄りが同居に固執しますが、家族の問題の解決を別居に求めた信吾は、当時にしてはなかなか新しい考えを持っていた年寄り。

なんで別居しないかって、お金の問題とかでもないんです。ただ、「同居が普通だから」「同居ってこんなもんでしょ?」みたいな空気が流れている家では、「別居?なんでわざわざ?」となるわけです。
ここら辺は今と価値観が全く違いますね。
とにかく、読んでいるとイライラするんです。核家族で育ち、核家族を気づいた身としては、そんなことうじうじうじうじ悩んでるくらいなら離れろや。ってなる。裏では悪口言いながら、仲良しアピールしてる女みたいな感じなんです。

川端康成の作品は、女の嫌なところを根拠コミコミで書いてくれることが個人的に好み。男から見て女の不可解なところを「女ってこういう行動するよね、ムカつきませんか?」つらつら書くんじゃなくて、女目線で女の行動を観察しているところがすごいです。男なのに。

個人的には、出戻り房子うっっっざw
家族と言えど他人同士。だけど、気になるものはしょうがない。昔はこういうことが、どの家でもあったのでしょうね。「菊子が妊娠したのではないか」「房子が昨夜泣いていた」「修一が昨日泥酔して帰ってきた」こんな筒抜けな感じ、無理無理無理無理!!!

文章、特に会話がいい。ある家の出来事を野次馬根性で見守る感じ。じっくり、読ませる作品でした。

おわり。