はらぺこあおむしのぼうけん

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【6月映画公開】共依存に依存症。毒親の親はだいたい毒親 「ガラスの城の約束」

こんにちは。

「ガラスの城の約束」つづきです。

 

 

dandelion-67513.hateblo.jp

 

 

ガラスの城の約束 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

毒親の親はだいたい毒親」これ。

以前は本作品の母親(ローズマリー)と父親(レックス)がどんだけクズ親かを書いたと思うのですが、今回は親の親。祖父母がどんな親だったかについて。彼らの育った家庭も、典型的な機能不全家族です。

 

母方の祖母は過干渉型。お金持ちで、土地も持っている。もともと専業主婦でしたが、子どもには教育が必要だと感じて教師に転向した祖母。自分の娘(ローズマリー)にも、教師になるために教員免許を取るように強要します。独善的で押し付けがましく、価値観を押し付ける。例えば、「土地は絶対売ってはいけない」実は祖母の死後、ローズマリーは100万ドルの価値のある土地を相続していました。しかし、母の教えに頑なに従い、それをずっと眠らせたままに。そんな大金があれば、普通の暮らしを送れたのに。大人になってそれを知ったジャネットは憤慨し、絶望します。

また、ローズマリーは高額なジュエリーを集めているんですが、それを絶対に手放せない。住んでいる家の床で2カラットものダイヤを見つけるのですが、それを売ろうともしないで自分のものにしてしまいます。「苦しい時には食べ物よりも自尊心のほうが大事」と。土地の件といい、ジュエリーの件といい、典型的な愛着障害ですね。アル中呑んだくれ夫とも結局別れられず、最後はゴミを集めて家をゴミ屋敷にしています。

父方の祖父母は、ネグレクト型。家族揃ってアル中で、アルコールなしには生きられない。ジャネットの家に負けず劣らず貧乏。腹たつことをすればぶん殴り、子どもを平気で地下に閉じ込める。性的虐待もあります。

 

とはいえ、日々の生活に困っているなら、祖父母の家に居候すれば当面の問題は解決されるのですが、それはできない。実家に帰ると、母も父も、自分が自分でいられなくなるんです。むっつりと押し黙ってしまう。

最初はクソ親だなぁと思って憤慨していましたが、彼らも自分たちの親から向けられた仕打ちを消化しきれていないんです。子どもに愛情はあるのに、うまく向けられない。子を幸せにする以前に、自分を幸せにできない。壊れた器のようで、愛情を注いでも注いでも、漏れていってしまう。私はぶっちゃけ、この親、どこかで子どもを捨てて逃げるなと思っていたんです。でも、それはしなかった。自分が育てるのだけはやめませんでした。ジャネットが学費に困った時は、ホームレスの身ながら、どうにかこうにかして1000ドル近くを見つけてくるんです。そういう愛ががいつまでも子どもを苦しめるんだけれども。

 

さて、なんの答えの出ないままこの小説は終わります。これ、ノンフィクションですから、現在進行形のお話なんですね。「ひどいこともされたけど、一番愛してくれたのは父」という言葉が印象的。親子の愛って決まった答えも形もないけど、自分が同じ立場だったらどうするだろうか、なんて考えさせられました。しかし、読後感はなぜか清々しい。

 

映画の公開が楽しみです。

おわり。