はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

古典

良き結婚とは、点で見ると不幸せな出来事ばかりであっても、線で見るとは幸せなものかもしれない。「コレラ時代の愛」G・ガルシア=マルケス

こんにちは。 「コレラ時代の愛」G・ガルシア=マルケス 人生で初めて、1年以上かかって読み終えた本です。すっげえ面白いってわけではないけど、決してつまらなくはない、いい意味で超単調な話。数ヶ月ぶりにページをめくっても、すっと馴染んでいけます。…

「世界は良い方向に向かっている」という大いなる勘違い ジョージ・オーウェル「動物農場」

こんにちは。 ジョージ・オーウェル「動物農場」。あの有名な「一九八四年」の著者であります。 数年前までは古書でないと手に入らなかった本作。最近(といっても2017年)新訳されたそうで、多くの書店で平積みされているのを見かけます。いろんな出版社か…

主人公夫婦以外はみんな好き!読み終わるのを切なく感じた超大作。 ジョン・スタインベック「エデンの東」前半戦

こんにちは。 ジョン・スタインベック『エデンの東』 映画も超有名だけど、おそらく原作も有名。BEST AMERICAN BOOKSにもランクインしております。本人は構想に25年をかけた超大作(全4巻)であり自身のライフワークと称しているそうですが、同じくスタイン…

いったん資本主義社会の歯車の一部となったら最後、一人の人間が為せることはほとんどない ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」(下)

こんにちは。 ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」 上巻までのあらすじはこちら dandelion-67513.hateblo.jp カリフォルニアに到着したジョード一家は、テント村(同じように職を求めて西に向かった人々が寄り集まっている場所。少ないお金で利用でき、水…

資本主義社会の中で改めて問う、神とは。罪とは。世界的名作の面目躍如 スタインベック「怒りの葡萄」(上)

こんにちは。 ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」です。超有名な作品で、若い頃にチャレンジを試みた記憶があるんですが、文章が冗長だったのか自分がバカだったのか、目が滑る滑る…。このたび(何年も前だけど)ハヤカワepi文庫で新訳が出たので改めてチ…

ペストとは際限なく続く敗北である。そして繰り返す。 カミュ「ペスト」

こんにちは。 今話題になっている本のひとつ、カミュ「ペスト」。カミュは「異邦人」にあんまり入り込めなかったのですが、コレは傑作!!!久々に本読んで感動を味わった気がする~! 最大のウリは、この本を読むことで「疫病を経験した先人」の視点から今…

ノーと言える女はいい女。勝ち女になるための最強の掟。デフォー「モル・フランダーズ」後半戦

こんにちは。 つづき、いっきまーす。 物語のあらすじはこちらから。 dandelion-67513.hateblo.jp ③情に流されない 「一時の情に流されてはいけない、有利な条件を持ち出すことをいつも考えるべし」それが一度目の結婚(兄と弟のゴタゴタ)で得た教訓でした…

自分が幸せなら、他人から憎まれようが気にならない。勝ち女になる最強の掟。デフォー「モル・フランダーズ」前半戦

こんにちは。 デフォーっていう名前よりも、「ロビンソン・クルーソー」のほうが有名。「モル・フランダーズ」です。一言で言うと、「なんか応援できない女」モルの人生回顧録。ところどころでイラっとするし、「それでも幸せに暮らしました」という結末には…

自分のものだと思った相手には平気で不義理をはたらく モーパッサン「わたしたちの心」後半戦

こんにちは。 前半戦の続き、いっきまーす! dandelion-67513.hateblo.jp パリに戻り愛人関係となった二人は、秋、そして冬を迎えます。冷え切っていく心と季節の描写の対比が素晴らしい。 モーパッサンの自然の描写は本当に美しいです。絵を見ているよう。…

2019年に出会えてよかった本BEST10

こんにちは。 今年の総まとめに、2019年に出会えてよかったなーと感じている本を紹介します。2019年に”出会えて”なので、必ずしも2019年刊行ではありません(というかほとんど違うかも… 最も印象に残った本をもとに、連想ゲームのように紹介していこうかなと…

「強い女」という言葉の嫌な響き 映画「人間失格 太宰治と三人の女たち」を予習する③~「ヴィヨンの妻」~

こんにちは。 いよいよ映画公開が明日となりました。最後は、妻の津島美知子です。彼女は晩年、「回想の太宰治」という回想録を出版しています。ただこれは、太宰治との暮らしを綴ったもので、晩年の女性関係には触れられていませんから、太宰晩年の作品を読…

蔓草のような女の弱さは、女の一番強い力 映画「人間失格 太宰治と三人の女たち」を予習する② ~「斜陽」と「斜陽日記」~

こんにちは。 映画公開が迫ってきました。今日は二人目、太田静子です。彼女は、「斜陽」の元ネタとなった日記を太宰治に提供した女性。太宰治の子「治子」を産み育てました。太宰治の死後、「斜陽日記」という手記を出版しています。 斜陽日記 (朝日文庫) …

権利を守ること、行使すること。権力を監視し批判することを忘れない エミール・ゾラ「ジェルミナール」

【読書感想文の書き方】夏なので読書感想文でもいけそうな本を、いい感じの深みを持って紹介したいという試み第一弾。エミール・ゾラ「ジェルミナール」

精神生活は憎悪と嫉妬に根を下ろしている? ロレンス「チャタレイ夫人の恋人」

こんにちは。 ロレンス「チャタレイ夫人の恋人」です。チャタレイ裁判、高校で習いました?私は女子校育ちなんですが、女子高生なんて性への好奇心の塊ですから、「きわどい描写があるらしいよ!」と同じようなムラムラの塊と連れ立って本屋に行きました。「…

女は女であるのではなく女になるのだ 川端康成「女であること」

こんにちは。 川端康成「女であること」です。タイトルからすでに、女の生々しい欲望とどろどろした感情がバチバチぶつかりそうですね。期待を込めて即決し、お金と本を握りしめてレジに向かいます。 舞台は田園調布。主人公は市子という主婦。夫の佐山は弁…

もうすぐ怪談の夏が来ますよ!! 父デュマ「千霊一霊物語」

こんにちは。 5月14日に発売されたばかりのこちら「三銃士」、「巌窟王」で有名なアレクサンドル・デュマの「千霊一霊物語」です。 私、光文社古典新訳文庫はかなり気に入っています。装丁以外。なんか全体的に似てしまうので、書影が公開された時の、コレコ…

二葉亭四迷=浮雲という知識だけではもったいない 二葉亭四迷「浮雲」

こんにちは。 文章難しいけど一気読みでございます。二日で読みましたよ、二日!!! 大変はすっぱな表現ですが、一言でいうと、なんか超むかつく小説。 主人公文三は、幼くして養子に出されて、叔父の家で育てられます。そこにはいとこのお勢がいて、文三が…

実は世界の100冊にも選ばれている 川端康成「山の音」

こんにちは。 今日は古典の日です。 川端康成「山の音」川端康成作品の中でも実はかなり評価が高い本作品。テーマは「日本古来の悲しみ」と明言されております。自営業の信吾は、妻の保子、息子の修一、その妻の菊子と同居中。修一は不倫しており、夫婦仲は…

安部公房テイスト。お隣の部屋を覗く話 アンリ・バビュルス「地獄」

こんにちは。 絶版で入手困難なこちら。 個人的にはドラマ化してほしいくらい面白かった本です。 江戸川乱歩とか安部公房とか好きな人は絶対はまるやつ。 下宿宿でお隣の部屋を覗き見する話。 これだけで変な妄想をするにはもってこいの題材でしょう?パリで…

夢ってなんだ、人生ってなんだ 田山花袋「田舎教師」

こんにちは。 自然主義文学の話で一度触れた田山花袋の登場です。「田舎教師」 いい!田山花袋は、写真を見ると、満足感と自信にみちあふれた顔してるから、深~い、暗~い小説を書くイメージがありませんでしたが、「田舎教師」、「重右衛門の最後」の二作…

クソ母に胸糞悪くなること請け合い モーパッサン「ピエールとジャン」

こんにちは。 最も好きな作家は「モーパッサン」。 私的には冷遇されていると感じる作家の一人。 ゾラもそう。今手に入るのは「女の一生」「脂肪の塊」「ベラミ」くらいで、もう少し多くてもいいのになぁと思っています。 フランス自然主義文学は、ゾラとモ…