大学生活を思い出したいときに読む本。恩田陸「ブラザー・サン シスター・ムーン」
恩田陸といえば、ミステリー、ファンタジー、ノスタルジーの三本柱で独特の物語を紡ぐ天才だと思っています。彼女の本を読むときは、とにかくハラハラドキドキしたい!みんなが疑心暗鬼になるやつください!という下心がありますw
さて、その中で結構異質に思える作品はこちら。「ブラザー・サン シスター・ムーン」
青春小説ですね。恩田陸のデビュー前の作品の焼き直し???と真剣に疑っていますw 謎らしい謎も、大きな展開もなくて、読後感もあっけなさすぎ。賞レース用に書いたきれいな作品?と思えるほど、拍子抜けします。
楡崎さん、戸崎くん、箱崎くんのそれぞれの大学時代と、高校時代の共通の思い出がテーマ。楡崎さん、戸崎くん、箱崎くんのザキザキトリオは(ネーミングセンスw)、高校の課外活動で一緒になり、その道中不思議な体験をします。同じ大学に進学。進学後はほとんど接点がなくなりますが、お互いのことを時々思い出したりはしています。女子は比較的マメなので、楡崎さんは戸崎くん、箱崎くんともに交流がありますが、男子二人はほとんどありません。
この3人をつないでいるのはきっとこの「不思議な体験」で、たぶんこれがあったからこそ連帯感が生まれて交流が続いているんだろうなと思います。
楡崎さんは、大学時代のいろんな経験の中で、自分には書くことが向いていると気づきます。書く/書かないでなはく、書いてしまうというのが小説家の性分のようです。
戸崎くんはバンド一色。箱崎くんは学生時代は映画研究会に入り、卒業後は金融関係に就職。脱サラし映画監督になります。
テーマらしいテーマや教訓はない作品ですが、大学時代を回顧した時に多くの人が感じる気持ちが素直に、本当に率直に書かれていることが大きなポイントで、なんか大切なことを学生時代に忘れてしまったのではないかと胸を締め付けられるような気持ちになります。
無為さ、愚かさ、平凡さ、
自意識過剰なのにコンプレックスの塊。やっとプライバシーを手に入れたのに人恋しい。何者かになりたくてたまらないのに、足を踏み出すのはおそろしい。
学生時代の時間はサラサラ流れていく、何か大事なものが脇を流れていっても、そうとは気づかないうちに、
というような言葉。これ、共感しませんか?
楡崎パートには全面的に共感できたのですが、戸崎くん、箱崎くんは遠い存在すぎて、正直共感できる部分がなく、ほぉ・・・。っていう感じでした。
戸崎くんはなんだかんだ言って根が明るいし要領がいいので、「あー、こんな子いたなー」で終了。箱崎くんはイケメンできっちりしていて成績優秀、きっと同級生にいたら叶わぬ恋をしていただろうなぁと、「ほえー」で終了。箱崎くんは行動や発言が、MAJORのトシくんに似通っていて、振り払っても振り払っても彼の顔がちらついて離れないw
学生時代はよかったなーっていうような大人になりたくはないなぁと思っていますが、やっぱり時々、大きな忘れ物したような気持ちになり、自分が大学生だったころの夢を見ると、あー嬉しい!となります。
ということで、学生時代のごちゃごちゃを思い出したい方は是非!
おわり。