怯んではならぬ憎んではならぬ悔やんではならぬ 詩「手から、手へ」
こんにちは。
今日紹介するのは詩集「手から、手へ」
贈り物でいただいたものなのですが、これ毎回泣きそうになります。言葉のセンスが素晴らしい。
詩の紹介って難しくて、あんまり引用しているともはや転載になってしまうので、どう紹介してよいのかわからないのですが、父と母から子どもに贈る詩。
やさしい父とやさしい母から生まれたおまえは、やさしいから不幸な人生になるだろう。やさしいから歩む道も険しい道だろう。
父も母もおまえとずっと一緒にいてられない。
おまえたちが一人ぼっちになったとき。生きる気力をなくしたとき。怯んではならぬ、憎んではならぬ、悔やんではならぬ。
自分が背負うものが重たく感じたら、荷をおろしたくなったら、
明るい太陽に向かっていないいないばあ。
いつもひかりに向かって歩め。
要素をまとめるとこんな感じです。
すでに、やさしいから不幸な生だろうと言ってしまうところ。正直ですね。古今東西、優しい人は損をします。プライスレスな何かが得られるとか、人生の最後に収支がとんとんになるとか言ってごまかしていますが、誰も教えてくれない秘密ですこれは。
千夜一夜物語にこういう話があります。あるお母さんが、旅することになった息子に言う。「道連れはちゃんと選ばなければならないよ。りんごを半分に割って大きいほうか小さいほうを選ばせる。そこで大きいほうのりんごを取った人は捨て、小さいほうを取った人を道連れに選びなさい」と。
感動した私は、以後明らかにサイズが違うものがあったら小さいほうを選ぶようにしていますが、よく考えてみると、小さいほうを選ぶ人間が、常に大きいほうを選ぶ人と連れ合いになったら一生損しながら生きていくんだよな、なんて思います。そして、気を利かせて小さいほうを取る人間は、子どもに小さいほうを選べと教えますから、子どもも損をするようになっていく、なんという不幸!!不幸の連鎖を断つために子どもには、「小さいほうを取る人と連れ合いになりなさい」と教えたほうがいいのかもしれない。
「怯んではならぬ、憎んではならぬ、悔やんではならぬ」のところが一番好き。柔らかな雰囲気の詩の中で、このくだりは迫力があります。
出会ったときは独身で、子ども目線で読んだものですが、親になってからだと何倍も味わい深く、何度も何度も読んでいる大切な本です。
あの、一つだけ文句言っていいですか。
帯!!帯!!!
「あなたにとって一番大切なものー家族のものがたり(ドヤ)」と紹介されているの、安っぽい。そもそも詩というものが、限りある文字数の中で限界まで削りに削って創作しているものなのに、しかも作品中で家族という言葉は使わないようにしているのに、「家族のものがたり!」ってしれっと!!!
今までもいくつかの記事で「家族」という言葉について噛みついていますが、家族が嫌いなわけではないです。あなたにとって大切なものを三文字以内で答えなさいって言われたら、もちろん「かぞく(3文字)」ですよ。
ただ、簡単に「家族」っていう言葉を使うメディアが苦手なだけです。幸せでない家、たとえばDVがある家も、父親が不倫している家も、経済的な問題を抱えてぎすぎすしている家とか、みーんな「家族」で「家族」だからこそ、その輪から逃げられなくて苦しんでいる人もたくさんいるのに、そういうのは見なかったことにして、本物のお父さんとお母さんがいて、じーちゃんばーちゃんも優くて明日の飯にも困っていない家ばかりを見て「家族!!」「家族っていいな」「家族を大切にしない奴はクズ」という価値観を乱発するのが好きではないだけです。
親としても、子としても、いろんな世代に読んでほしい作品でした。
おわり。