はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

【最新刊】中だるみ?とりあえず零ちゃんが将棋に集中できますように… 「三月のライオン」15巻(ネタバレ)

こんにちは。

本日(12/26)発売ということで、お財布握りしめて本屋さん行ってきました!

三月のライオン15巻です。既に前回号からモヤモヤ~っとしていましたが、どうなるかな?

3月のライオン 15 (ヤングアニマルコミックス)

 

今回は、Chapter 154~166、

①星のふる夜に(1、2)

②あづさ1号(1~5)

③道(1~6)

あかりの銀座物語

が収録されています。

 

①星のふる夜に(1、2)

前回は、職団戦~学祭のところで終わっていました。走って零を迎えたひなたは大仰にコケてしまい、足を怪我します。それをフォローするという体で自然に腕を組んで歩く二人。零の同級生にカップルと誤解されたことをきっかけに、ひなたに告白する零でした。

零の告白はどうでもいいんだけど、「好きな相手からあからさまに好意を寄せられても気付かないひなた」、「誰が見てもかわいい~!女の子なんだけどそれに無自覚であるひなた」や「後ろで告白を聞いていちいち突っ込んでいる同級生」などなど、少女漫画のあるあるを煮詰めたような構成に、そんなことあるかい!と体がかゆくなりましたw ひなたは中学生のときはイジメに立ち向かう芯のある女の子だったはずなのに、高校入学後は天然偽装?キャラになってしまいすごく残念。描かれていませんでしたが、おそらくひなたの答えはOK。二人の新しい関係が始まりそうです。

 

②あづさ1号(1~5)

今回の新キャラも濃い!!!野火止あづさという21歳の棋士が登場します。高校生デビューで天才ともてはやされてきましたが、二階堂に抜かれ、零にも抜かれ焦っています。ただ、彼は腐ることなく、一から立て直しができる強い心の持ち主。彼の悪い癖は、考え始めると時間が止まることと、将棋に集中すると家にいると勘違いしてしまい服を脱ぐというところw

人は情熱を失うと近道を求めるが、近道には人と同じものしか落ちていない。だから彼はあえて辛い道を突き進む。そして、できないことは、本当にできないかしんどそうでやりたくないかの二つに大別され、たいていの夢はしんどそうでやりたくない先に光っている、というばあちゃんの言葉を胸に、彼は研究を重ねます。

辛くも勝利した零ではありますが、彼は対局中に「まっくらな部屋」に至るのが早くなってきたと自覚します。「まっくらな部屋」とは言ってしまえば、未知の領域。幾千、幾万と見てきた過去の棋譜にない手。棋士は、大量に蓄積された過去の棋譜から次の一手を導き出しているそうですが、もちろん、見たこともない手に対しては自分で考えるしかなく、すさまじい集中を必要とします。自分とまっくら闇の境目がわからなくなるような激しい疲労を感じた零。そんな彼を癒してくれたのは、ひなたのシチューでした。

 

③道(1~6)

隠れファンも多い田中七段の過去が明らかになります。「鬼強くはないけれど憎めないキャラ」として周知されてきた彼が、最近とみに強くなった。という話。田中七段には息子が二人いるそうですが、小さい頃は病弱で何度も入院したそうです。そんな息子たちを抱え、夫婦で協力し合いながら育ててきました。子どもが大学生になり将棋に全力を傾けられるようになった今、これまでの自分のスタイルを捨てて新たな強さを手にします。

零は今回も辛勝しますが、今回の対局ではあっという間に「まっくらな部屋」に飲み込まれてしまいました。「自分が抱えてきたものはすごく大きいと思っていたけれど、田中七段に比べたら30%くらいだった。それなのに、こんな恥ずかしい将棋を指すなんて…」零は出口のない部屋に閉じ込められたような気持ちになります。実は零、今期の昇格はかなり厳しいようで、将棋のほうはあんまりうまくいっていない。

翌朝、学校の屋上でひなたと作ったおにぎりを食べながら零は思います。「今までは泥水でも雑草でも拾い集めて食べてこれたけど、あの生活には戻れない(=人のぬくもりを知ってしまった以上、あの孤独な生活には戻りたくない)」。今の零の悩みを、「アウトプットばかりでインプットが追い付かない状態」と看破した先生は、「おにぎり(三姉妹という自分の居場所)だけは絶対離すな」とアドバイスします。この言葉は、教師としても将棋を愛する者としても言うべきではないと思いながらも、先生は零を見送ったのでした。

 

感想

★「孤高の天才棋士」キャラはいったん終了?

人の口を借りる形ではありましたが、零が「病的に努力を重ねてしまう秀才」であることが明らかにされました。零の強さは、人並外れた研究量に裏打ちされていで、別に天才なわけではないと。というか、宗谷名人は天才ですが、彼もめっちゃくちゃ研究しているらしいし、彼を追う人たちも、寝るとき以外全部将棋に捧げています。

今までは、将棋会館=鬼の住処、棋士=鬼、と表現され、将棋の鬼の宗谷名人、胃の激痛に耐えタイトルに執着する島田八段、宗谷名人との対局に破れ壁を蹴破るほど悔しがる隈倉九段、文字通り命削る二階堂とか、棋士版銀英伝と呼びたくなるような漫画でした。そして、黒い気持ちを抱えてなお「勝たなきゃ自分の居場所がない!」と心を殺して将棋以外のことを頭から排除しようとする零も、彼らに負けず劣らず鬼の子!感がありましたが、最近の零は何かと注意散漫すぎて、彼ら将棋の鬼たちに伍するのはちょっとアレな感じ。過去の貯金で何とか勝っている感じがしますが、このままだとスミスや横溝と言った、将棋への熱意が読めない賑やかし先輩連まっしぐら…?

2~3号前くらいから気になっていたのが、零ちゃんあんまり将棋のお勉強してなくね?説。ひなたの高校受験を助けますとか言って家に入り浸っていた頃から、「毛布にくるまりながら棋譜を並べる」あのかっこいいシーンがなかったです。それ以上に三姉妹とワイワイ飯食ってるシーンばかりが目立つ。特に思うのが、毎晩?のように三姉妹の家に向かう零。対局終わって19時とかに三姉妹の家に着いて、22時にはお暇していると信じますが、何をしているの??そして、食後は嫁(ひなた)と一緒におにぎり作って…って、ヤダ、なんか気持ち悪っ!!!!!たかが2、3時間と思うかもしれませんが、その2、3時間も将棋に捧げている棋士たちに大きく溝を開けられている感があり、何とも言えません。それ以前に、ひなたと正式に交際するなら毎日家に行くなよな…。

三月のライオン、序盤は、棋士の業みたいなのをこれでもかと見せつけてきたんです。ライバル棋士には、感想戦の時に号泣したり、畳を延々にむしり続ける男とかいて、それがすごくかっこいいんですね。でも零ちゃんは、思うような将棋が指せなくて悔しい!!!!!!とか、焦る!!!!!ってなった気持ちを、嫁のシチューで流せるんでしょ。そういう程度なんでしょっていう。ここ数巻でゆるやかに零ちゃんに幻滅していっている私がいます。

三月のライオンは、「孤独」を背負っている零を象徴する「一人で部屋で過ごす姿」や「橋を渡って家に向かう」「毛布にくるまりながら棋譜を並べる」、そういうシーンが好きだったのに、今や入り婿…高校卒業したら二世帯住宅を建てたりして。零にとって将棋は孤独と深く結びついています。このままの鬼強さを維持するためには、昔のように、心を殺して将棋の鬼にならないといけない。しかし、三姉妹の優しさが欲しくなって、温かいほうに流れてしまうんです。島田八段や二階堂のように、将棋一本に絞る覚悟ができるかが今後の見どころかなと思います。

 

★桐島、将棋やめるってよ???

最後は、先生と三姉妹ともんじゃを食べながら、「自分がこれまでなくしたもの、手に入れたもの、僕がこれからなくすもの、そして、なくしたくないもの、その全部を乗せて、大きな川は流れていくのだ」なんていうシーンで終わり。

なくしたもの=家族(居場所)

手に入れたもの=三姉妹(居場所)

なくすもの=??

なくしたくないもの=三姉妹

って、もう将棋やめるんかなw

現在、零ちゃんを一足飛びで越えていった天才棋士がリアルに存在するわけで、彼の後塵を拝している感ハンパない。あんなにかっこよかった零がどんどん色あせていく中、将棋じゃない道を模索する系の漫画になるんでしょうかw

スランプの原因を、アウトプット、インプットと例えたあたり、先生は研究不足を見抜いているような気がします。しかしそこで喝を入れなかったのは、零が「タイトルを取りたい」と一度も口にしなかったこと、そして過去を知っている以上、居場所を見つけて幸せになってほしいという気持ちがあるからでしょう。

零は努力の子でした。将棋の悔しさは将棋でしか晴らせないはずなのに、モヤモヤを嫁のシチューで流し込んでおわりにしているあたり、今のところ飛躍は望めないのかな…?おそらく、おそらく今後、二階堂の死とか宗谷名人の過去編があるのでは?と思うので、そういうところで奮起するんでしょうか。

 

★あかりおねえちゃんのお相手問題

最後は、先生がモモちゃんを肩車しています。このまま先生とくっつくのかな?

あかりおねえちゃん(20代前半)にアラフォー男子を見合いさせようとする鬼畜な零に、前々回号くらいからすでに拒否反応を示していた私。タイトルも取っていないのに人の恋の世話をしようとする差し出がましさと、居心地が良い三姉妹のもとに身内をくっつけていこうという発想が本当に気持ち悪い。あかりさんのお相手探しは銀座でクラブを経営しているおばさんに任せておけよ。

前回号で、島田八段が「タイトル取るまでは女のことは考えられない」と言っていたあたり、島田さんはいったん脱落かな?このまま先生と…???

 

次号もまたクリスマスシーズンでしょうか?一年が長い…!!

 

おわり。