はらぺこあおむしのぼうけん

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続編ということもあって期待値が上がった?半端な試練の波状攻撃 デボラ・インストール「ロボット・イン・ザ・ハウス」

こんにちは。

デボラ・インストール「ロボット・イン・ザ・ハウス」。前回の「~ガーデン」の続編です。「~ガーデン」と続編の「~ハウス」は同時に購入していたのですが、ガーデン読了後に、続きを読みたい!という気持ちが全く起こらず、しばらく放置。「うっかり続編に手を伸ばしてしまったなぁ。。。」と若干後悔していましたが、今回、意を決して続編を読んでみました!

が、うーん、やっぱりイマイチ!!

ロボット・イン・ザ・ハウス (小学館文庫)

前回の話はこちら。

dandelion-67513.hateblo.jp

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前回は、ベンとエイミーの間にボニーという女の子が生まれ、とりあえず離婚するのやーめたってなったところで終わっていました。いまだにヨリを戻さず(ていうか離婚はしていないんだけど)、気軽な友人同士としてワイワイ共同生活を営むチェンバーズ一家。ボニーも1歳になりました。

そんなある日、また庭先にロボットが。次はつやつやした球体で、ジャスミンと名乗る女の子。「自分はボリンジャーの命令であなたたちを探し出しました。ココの位置情報をボリンジャーに送り続けます」と言ったジャスミンは一家の庭に居座ります。やっぱりボリンジャーとの対峙は避けられないか、と気が気ではないベンら。警察に相談したいところですが、彼らとてタングの窃盗という脛に傷持つ身、行動には移せません。

さて、ボリンジャーとの再会までにはたっぷり1年近くありますから、その間にチェンバーズ一家に訪れた試練とその顛末を記載します。

・エイミー解雇

→収入が一時的に途絶えるけど大丈夫?と愛を確かめるシーンがありましたが、家計を切り詰める様子はなく、ただただ贅沢三昧していたので、謎。その後、エイミーがロボット権専門の弁護士を目指すという流れになる。

・ロジャーのゲスト出演

→非の打ちどころのないクールガイだったロジャーがなぜか、ボサボサ頭にヒゲボーボー、アル中気味でチェンバーズ一家を訪ねてくる。ここでも二人の愛を確認する流れに。

・タングのエネルギー源は核エネルギーだった(焦)

→ボリンジャーの元同僚のDr.カトウが家に訪ねてきて緊急手術を行う。燃料棒?らしきものをしばらくキッチンテーブルに置いておくという不謹慎極まりない展開

・タング、家財保険に入れない

・タング、修理できない、定期点検も受けられない

・タング、どこへ連れて行っても盗品扱いされる

→この三つは、個人識別のチップがタングに埋め込まれていないせいで起こったトラブル。チップを埋め込み正式な所有者として登録しようとすると、販売証明(保証書みたいなもの)の提示を求められる。パクってきたものですからもちろんそんなものなく、手作りです、って言ったら、「え?許可もないのにアンドロイドを製造するのは法律で禁止されているのをご存じないので??」ともっとヤバい問題に発展しそうになり、にっちもさっちもいかない状態。ただこれらは、ボリンジャーを倒したら全て解決されたのでどうでもいい。

・タングとボニー迷子になる

→タングが妹分であるボニーの世話をしたがるように。おそらく人間でいうと3歳くらいになったタングは、「自分でやる!!!!」「自分でー!」「やらせろー!」としつこい。タングの自己肯定感を損なわないようにしながら、どのようにタングとボニーを世話するか、というベンとエイミーの試行錯誤には共感します。

 

と、さすがに2作目ということでまた新たな試練が必要だっていうのはわかるけど、どれもこれも一発屋。イマイチ響かない。

特にロジャーのとこ。ハンサムマッチョで身ぎれいな金持ちエリートのロジャー。モテるからこそ常に冷めた目で女を見て、恋におぼれるような真似はしない男です。前回作でそこまでキャラを作りこみ、最後は冷酷に2人を放り出すという憎まれ役まで買って出たのに、なんで今更(破局後1年以上経って、しかも初訪問)1回だけ顔を出すの??しかも、今更「やり直せないか」と柄にもないことを言うロジャーに、「あんたなんか遊びだったのよ」と突っぱねるエイミー。それを陰で見ていたベンはガッツポーズ。こんな茶番いらねぇ…

前回作から、ロジャーまわりのエピソードだけが一貫性なくふわふわしているんですね。ベンにとっての越えられない壁として登場してみたり、愛情のない冷酷な男になってみたり、なぜかエイミーがいないと生きていけない男になってみたり。男と女の間のことなんだから、理不尽な終わりがあったっていいじゃない。エイミーが捨てられたからといって、彼女の価値が毀損されるわけではないのに、わざわざ”大切な主人公の妻”エイミーに勝利を与えるために再登場させられた気がして、すごく微妙。

 

話がそれましたが、ストーリーに戻ると。

問題のジャスミンは、彼女を一家に迎えることで愛を覚え、家族として振る舞うようになります。前回と同じ流れですね。その後ボリンジャーと対決し、体当たりで万事解決っていうのも前回と同じ流れ。ベンとエイミーの関係がどうなるかは、予想通りです。

正直、前作の焼き直し感がぬぐえず、うーーーーーんっていう。そしてベンの優柔不断さがパワーアップしている気がして、すっげーーーーイライラしました。

 

ベンのイライラポイント

★姉に頼るクセに一人前ぶる

ベンには、エイミーをラスボス化したような弁護士の姉ブライオニーがいます。セレブ趣味はエイミー以上でめんどくさい女ではありますが、近所に住んでいる上に子どもも大きいということで、育児の戦力としてフル活用中。そんなブライオニーは、顔を見ればいつも「二人はこれからどうするの?ヨリを戻すのか、真剣に話をしろ」と言います。彼女からしてみれば、離婚する!って騒いだ挙句に元サヤにも戻らず、「友人のままで心地よい関係」とかフザけたことをぬかしている弟夫婦。しかもボニーも1歳半…ということは3年近くも宙ぶらりんで、子守りのために頻繁に呼び出されていれば、お前らの関係が夫婦なのか仮面夫婦なのかシェアハウスなのかはっきりさせろや!と聞きたくもなろうと思うわけです。

しかしそんなこと口にしようものなら、「また僕たちの話か!そりゃ、うまくやっているよ。いちいち口をはさむなよ!デリケートな問題なんだ!」とあからさまに嫌な顔をするベン。何様だよ、とイラっ。

 

★エイミーを崇拝

二人がヨリを戻すか問題、デリケートなわけではなく、ビビってその話を避けているだけなんですよね。エイミーは何度も「抱いていいわよ!」オーラを出しているわけで、エイミーとしては、ちゃっちゃとセックスして忘れてほしいというところでしょう。それなのに、エイミーの体に触れることが恐れ多い!!みたいなこと感じてて大変気持ち悪い

ご飯を食べに行くときにおしゃれをした姿を見て、「ドレスがかわいい!体のラインが!」といちいちムラムラするベン。冬にスキー旅行に行ったとき、「あれもしたい!これもしたい!家政婦を雇うのも譲れないわ!」と贅沢を言うエイミーに、「ああ、これこそが僕が愛したエイミーなんだ!」とうっとりするベン。(生活を切り詰めるって話どこいった?)他にも、エイミーがメールを見て顔をしかめていたら、「あ!フラれる!!!」と、慌ててエイミーに指示されていた庭の門を修理するなど。40間近の男ですよ?さっさとヨリ戻せば?とイライラ。

対して、エイミーからベンへの愛情はよくわかんなくて、例えば、エイミーがジャスミンを粗大ごみに出してって言った時。ジャスミンは一応ロボットだから、ゴミに出そうとすると確実にモメるだろうと思ったベンは、交渉事は弁護士であるエイミーにしてほしいとお願いします。しかし、「だからこそよ。あなたの成長のチャンスでしょう」とベンにやらせようとするんですね。「あなたが、私が認める一人前の男になれるかどうか見ていてあげるわよ」というスタンスは、私は悪いことしていないわ、という主張に思えます。え?そうだったっけ?

前回、「自己中心的で見栄っ張り、おまけに夫のことを下に見ているエイミーという問題は依然残ったまま」というようなことを書きましたが、ベンは綺麗でセクシーなエイミーの足元にひれ伏したい欲の塊だから、エイミーさえ自分の腕の中に戻ってくれば、大部分のところを譲歩できる、ということで、エイミーという問題なんてもともと存在していなかったことが判明しました。割れ鍋に綴じ蓋、というほどではないけど、だいたいの夫婦が、外から見たら「なんで一緒にいるのかしら?」って思われるようないびつさがあるのかもなぁ、と納得。

 

 

とまぁ、期待しすぎた分もあると思いますが、イマイチでした。

もともと、英国版ドラえもんという触れ込みで読み始めた作品。英国版のび太は、もちろん優しいんだけど、小学生なら許された優柔不断さはそのままに、年齢相応のいやらしさを兼ね備えた男になってて、すごくアレでした。エイミーはしずかちゃんの嫌なところを30年間ぶっ通しで煮詰めたような感じで、それはキャラ通り。

この物語のテーマは、前回と同様、「悪いことはそんなに起こらない」です。人は大人になるとあれもこれもと心配するけれど、家族を大切にして素直に生きればある程度うまくいくよ、というメッセージ。「そんなことアルマジロ」と思ってしまう私にとっては、教訓が甘~い割には登場人物が全然好きになれない、そして仕草や言葉がかわいいはずのタングの一挙手一投足が、わがまま盛りのわが子を想像してしまい、イライラするという三重苦。笑

 

実は最新作、「ロボット・イン・ザ・スクール」も発売中。40代になったベンがどれくらい優柔不断になっているかも知りたいし、エイミーのセレブ妻っぷりも覗き見てみたい気持ちもあるけど。とりあえずはやめときます。笑

ロボット・イン・ザ・スクール (小学館文庫)

ロボット・イン・ザ・スクール (小学館文庫)

 

 

おわり。