はらぺこあおむしのぼうけん

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撃たれる覚悟もないのに撃ってる奴 キラ・ヤマト。漫画「ガンダムSEED Destiny THE EDGE」後半戦

こんにちは。

 

前半戦に続いて、アスラン以外の人の尊厳も回復していこうと思います。キラの陰でひっそりと泣いていた人の誤解も解いてあげたい。

 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY THE EDGE(1) (角川コミックス・エース)

dandelion-67513.hateblo.jp

 

最初からシャアと同じ声のためにラスボス視されていたデュランダル議長です。彼は遺伝子の研究家としてある理想を持っていました「争いの根源は、劣等感、憎しみ。そして自分の進むべき道がわからない不幸。持って生まれた遺伝子を解析することで、その人に最適な人生プランを用意してあげる。そうすれば争いも起きない。争う気も起きないだろう」と。いわゆるディスティニープラン。

混乱に乗じ、「ディスティニープランの実行を宣言する」と高らかに世界にぶち上げたデュランダル。序盤から、優し気な笑顔の裏にはでかい野望があるとはわかっていましたから、それくらいは想定内。ただ、続いた言葉は…「私の意見に従わない国はどんどん潰していきまーす」という衝撃的なもの。は?…人望があるあなた。どうにでもやりようがあったでしょう。なんで、なんでそんないきなりわかりやすい三下の悪党に成り下がるんだ。そうか、キラに戦わせる理由を作るためか。戦う理由がないからいろいろケチつけて探すしかないんだよな。制作者サイドに切り捨てられたデュランダルが哀れでしょうがない。

漫画ではアニメほどアホな感じで描かれないです。あくまでも方向性の違いが強調される。でも、それなら余計、対話で解決しろよな…(小声)

 

トラウマポイント3。ディスティニープランぶっちゃけ関係ない「お前はどうでもよくね?」 現象

ディスティニープラン、管理社会はめっちゃ気持ち悪い!ディストピア!という感じで描かれていましたが、もう一度このアニメの原点に立ち返ってみましょう。遺伝子をいじって髪の色や目の色、特定の才能を伸ばすのはOKとされているわけです。また、適合する遺伝子が限られているため、ナチュラルと比較して子どもをつくる力が弱いコーディネイター。結婚の際に遺伝子の相性を検査して、子どもが望めるかどうかを判断されます。そういうのはOKな世の中で、そこまで拒否反応?

コーディネイターは、訓練をしなければナチュラルと同じような物なんです。だって、アニメの中にもお前は本当にコーディネイターなのか?お前のお母さんとお父さんはお前に何を望んでわざわざそんな顔に…?というくらいのモブ顔やバカ士官がいっぱいいましたよ。で、そのコーディネイターの中でもトップクラスの優等生(成功例)のキラ、ラクス、アスラン…めちゃめちゃディスティニープランに反対してたけど、関係なくね?あんたたちはあれもこれもと望める能力があるけど、コーディネイターの失敗作は「適性を示してくれるなら」ってなるかもしれない。そういう下位層の意見も聞かず「でも俺はいろいろ選択したい!(だって俺持ってるから!)」って独善的だなお前って。

漫画では、「明日を選ぶ」「明日が欲しい」という言葉でぼんやりですね。ここはいろいろと畳みかけ、戦争の原因を前作と同じく議長になすり付けていき、皆がラクス教に傾倒していく、大嫌いなシーンなので飛ばし読みです。

 

Distinyでは、戦争産業で肥え太るロゴス達、前回からの課題であるクローンについて、触れたような触れていないような…そういうの、ミーハーにちょっと触れてみたなら一つの答えくらい出そうぜ!という感じ。SEEDに比べて、「キラ、お前を戦場に出してどんどん活躍させてあげるからな!ちょっと待ってろよ」という大人の思惑を感じましたね。あと、死んだ人が生き返るのはやめたほうがいいです。すごくびっくりするから。

また、シンに対して「憎しみで剣を取るな。お前はダメ人間だ」と怒っていますが、剣を取る理由なんて何でもいいし、そんなに憎んじゃダメですか?目の前で家族殺されて世界を憎まないほうがおかしい。みんな心に地獄を抱えているのに、それを肩代わりもできない人間が「憎むな」と…?そんなにディスティニープランを排除して自由な世界を望むなら、人を憎む自由くらい保障してあげて。ってなります。

 

さて、Distinyでは「殺されたから殺して~」「想いだけでも~」に加え、

「今正しいと思うことをやる。間違っていたら、また考えよう」

という思想が追加されました。最初のほうは私怨でガンダムを駆っていたキラですからその行動への裏付けは必要なんでしょうが、すごい発想だな。「行動が正しいかどうか確信はありませんが…とりあえず間違っていたらその時迷えばいいと思います。」って、間違えた道に連れていかれた人、殺された人についてはどう思うんだろう。

コードギアスに「撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけ」というかっこいい言葉が出てくるけど、キラは絶対「撃たれる覚悟はないけど撃ってる奴」です間違いない。「道を間違えて、それに殉じた人は?」と聞いたら「…わからない、わからないよ、一緒に考えよう」って答えて終了でしょうね。

 

さて、アンチ・キラの与太話はここでいったん終了して、アスラン争奪戦の話。

 

SEEDって劇場版の噂があったから、そこで明らかになるはずだった「で、アスランの横にいるのは結局誰なの?」問題。劇場版が消えたため宙ぶらりんになっていますが、ネット情報によると、「アスランがオーブ軍の准将、メイリンザフトに戻った(=別れた)」説、「アスランメイリン共にオーブ軍」説、「アスランメイリン共にザフト?」説入り乱れているようですよ。ちなみにキラはラクスのかばん持ちとして便宜上ザフトに所属したと…。いや、ザフトって元テロリストとか元脱走兵とか基地内のシステムハッキングして脱走を手助けした人とか、極めつけに元地球軍のパイロットを受け入れるなんて、そんなに人不足?大丈夫?それともラクス様の指示ですか?

真偽不明の情報の中にはには、アスランもキラもザフトとオーブを兼務というのもあって、兼務!!国家、軍を舐めすぎだろ(前回に続いて2回目)という印象。小さい島国であるオーブが、他国の争いに干渉しない・されないを理念として貫く以上、強大な力を持つ必要がありますよ。カガリは「強すぎる力は争いを産むから」と反対するだろうけど、もう一回戦争しないとわからないの?どうせまた2年もすれば戦争勃発。そして、力を持て余した老害がまた出陣してくるわけです。

 

話を戻して争奪戦。この漫画ではアスランカガリ推しですからご安心を。同じ未来を見れるように、それぞれのできることをしよう、という展開。メイリンなんて途中から退場という憂き目に遭います。

カガリ推しが多いみたいですが、一つ注意したほうがいいのは、男の人の多くは瞬間湯沸かし器のカガリより、ちょっと抜けているけどぼーとしていてかわいいメイリンを選択しがちだということです。いっつも「おいおい」となだめないと話にならない女より、近くにいて何くれと世話を焼いてくれる女子のほうが安心感があるわけです。アスランみたいなお豆腐メンタル男なら余計に。まぁメイリンは浮気性だと思うけどね。ていうか、「ああ」とか「いや」とかしかしゃべらないし、キラキラ言ってうじうじしていてもモテるって、イケメンすごいな。

カガリのほうが最後はアスランに選ばれる、というストーリーは、現実にはなかなか存在せず、オースティンの小説でしかお目にかかれないと思います。

 

と、漫画は少女漫画タッチで線が細くてやわらかくて、かわいい絵柄なので、女性受けしそう。あと、あふれんばかりの作者のアスラン愛を感じて、「そうそう、みんなでアスランをいい方向によみがえらせよう!!」という気持ちになりました。作者がキラシンパだったら私泣いてます。。。そしてシンは漫画の主人公にもなれずに可哀想。

 

と、そんなこんなで後半戦も終了。

アニメを知っている人も、知らない人も、読む価値あり。

 

おわり。