はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

伊坂幸太郎「シーソーモンスター」 前半戦

4/5発売のシーソーモンスターの感想です。購入したのが5日、そしてその週末に読みきる。買った日に読めばいいのですが、なんかもったいなくてステイしてしまいます。そして一気に飲み干す、ならぬ読み干すという感じ。

なんで新刊は金曜発売なんですか? 漫画も。週末に読ませるため? それともなにか理由あるんですか?

シーソーモンスター (単行本)

私は、伊坂幸太郎森見登美彦の両名は、発売日に本を買うと決めています。新刊は2000円近くしますから財布にはちょっと痛いですが、推しの本を待てるって本当に幸せなことなんですよ。

私は昔、フランス自然主義文学の魁、モーパッサンにはまったことがあります。有名な長編は「女の一生」ですが、彼は短編の名手で、短編がめちゃ面白い。件の長編も、文字通り主人公の一生を追った話なのですが、短編の連続のような感じで、とにかくグイグイ読ませてくる。それをきっかけに、バルザックだのデュマだのフランス文学にドはまり。
さんざん読み尽くしたあと、また現代作家の作品を読み始めたとき、「好きな作家の新作の発売を待てるって幸せ」ってすごく当たり前のことに気づきました。

モーパッサンだのバルザックだのは、未公開の作品が見つからない限り、「モーパッサンの新しい作品が来週発売されます」ってことはありません。好きな作家の新作を待てるのは著者の存命中だけです。推しは生きているうちに推せ、とはまさにこのこと!

ということで年寄りの長話に付き合わせてしまいましたが、好きな作家の本は図書館で予約せずに買いましょう。著者を応援するただひとつの方法。新作の原資でもあります。

まぁ、とはいえ森見登美彦は遅筆だから、財布にガンガン攻撃してくるのは主に伊坂幸太郎ですねw

さて、シーソーモンスターは、螺旋プロジェクトという原始時代~未来までの一族を巡る物語を書いた複数作家の共演の一部です。詳細はググってくださいw

伊坂幸太郎の担当は昭和のバブル期と近未来です。まずは前半戦、昭和の話から。

主人公は嫁姑問題の間に挟まれているMRです。当時は女は郊外の戸建てで専業主婦の時代ですから、嫁姑は昼間バチバチぶつかり、夜に愚痴をこぼされるんですね。仕事の疲れと家庭の疲れのダブルパンチ。しかも、新しい担当先は診療報酬の架空請求をしており、それを見過ごせない彼はすごいゴタゴタ(殺人含)に巻き込まれていきます。

さて、嫁の宮子さん、伊坂幸太郎にありがちの元スパイ。ふとしたことから、姑の過去、義父の死亡理由、それにまつわるあれこれが気になり始め、元職場のツテも頼りながら調べていきます。

姑は何者?とさんざん煽るのですが、もう序盤で割れます。あ、これ伏線だなとピンときます。伊坂幸太郎に期待しすぎている私なので、個人的には☆3かなぁ。
序盤にだいたいのネタバレ。しかも、姑の過去がじわじわわかってくるならまだしも、一気に彼女の口からばらされるのが残念。もう少しいろんなエピソードに絡めて姑の過去を出してほしかったです。

その旦那のゴタゴタがらみからのハッピーエンドが性急過ぎた感あり、ちょっとだけ残念なんだけど、伊坂幸太郎作品だけあって、スピード感、会話の妙、どんどん読み進められます。

さてさて次は近未来、後半戦です。

おわり。
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