はらぺこあおむしのぼうけん

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現役の女子、そして、かつての女子に贈る「いつか眠りにつく前に」

12年前の作品なんだけど、何度でも見返す価値があるなぁと思っている映画です。若くていろんなことに挑戦する盛りの女子にも、何を思うにつけ後悔ばかりが先に立ってしまうかつての女子にも見てもらいたい作品です。

 

 

 

いつか眠りにつく前に [DVD]

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死の淵にある老女。

看病をする二人の娘が母親の人生に想いを馳せる。

過去の過ち、罪、不幸せだった結婚、華やかではなかった人生。

何者にもなれなかった老女は、最期に何を思うのか。

彼女は何かを残すことができたのか?

 

若いときって、自分は何者かになれるだろうと根拠のない自信を持っていますよね。大事を成すだろう、尊敬される大人になるだろう、親と同じ過ちは犯さないだろう。人の失敗を見ながら、自分は大丈夫と信じて疑わない。

 

でも多くの人はあるとき、自分はどこかで間違ったかもしれないと思い始める。自分の人生はどこにいった?本当に自分のものだったか?どこか別のところに自分の人生はあるのではないか?と。

 

この老女は、失敗して他の人生を夢見ているクチなのですが、彼女は失敗を恐れ何も挑戦してこなかった自分の人生を悔い、こう言います。

 

「でもたまに思うことがある。”七人の恋人がいる、サーファーの娘になりたい”」

 

この言葉、昔のことを思い出したので印象に残りました。

新入社員のときお世話になった先輩がいたんですね。彼女、私にとってはすごく憧れで、美人で気がきくからファンが多く、同性異性問わず友達がいて、学生の時から付き合っている人と結婚することに。

結婚報告を受けたとき、「いいなぁー。先輩はなんでも持っていて」って言ったんです。そうしたら彼女、「わたしはAさんが羨ましい。生まれ変わったら経験人数25人の女になりたいわ」って。は!???ってなりました。Aさんっていうのは共通の友人。男関係は派手でしたが、はたから見ててちょっとその男どうなの?っていうことも多くて、恋愛しては失敗し。とにかく恋愛体質。先輩は堅実ですから。初めての彼氏でアタリ引き当ててるお前の方が断然幸せだよと先輩に対して思ったのでした。

ただ、こんなに幸せそうに見える人も自分が選び得なかった他の人生を夢見ている(しかも来世に期待までしてるw)んだと気付いた時、実際マリッジブルーもあったと思うけど、私はびっくりすると同時に、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ「ざまぁw」と思ったのでした。私は先輩より10こも若いから、まだ時間があるわ、先輩みたいな後悔しないようにしよー(鼻ほじほじ)って。

 

それから10年もたちましたが、先輩の言葉のおかげでいらぬ後悔をしなかった部分もあるし、なんだかんだ言って、やっぱり後悔していることもたくさんあります。

この映画、女ばかりが出てくる映画の割に、テーマは少年マンガのように「挑戦して失敗しなければ何も残せない」なんですよね。

 

だから若い子は、「このババア達みたいな失敗しないようにしよー(鼻ほじ)」って思えばいいし、他の人生を夢見はじめている人は、それでも良かったんだと自分を肯定するために見るもよし。

 

彼女の人生はぱっとしなかった、でも最後の最後にそれを受け入れることで、やっと彼女の人生に光がさします。 

「人は謎めいた生き物よ。最期には多くのことにこだわらなくなる」

と、老女は言うのです。

 

この言葉で救われる人も多いだろうなぁと感じます。

現役女子も、かつての女子も、是非。

おわり