はらぺこあおむしのぼうけん

読書、映画、ときどき漫画のレビュー。最新刊から古典まで。

ノンフィクション

殺人事件をトリガーに、宗教を一から捉え直し定義し直そうと試みた大作「信仰が人を殺すとき」ジョン・クラカワー著

こんにちは。 「信仰が人を殺すとき」ジョン・クラカワー著 信仰が人を殺すとき…と言われても、戦争の大きな原因の一つは宗教だしなぁ…とか考えるといまいちピンとこない邦題。原題は”Unnder the banner of heaven”で、こっちのほうが意味がとおる感じではあ…

世界や人と繋がりたいからこそ、人は本を読むのかもしれない 「プリズン・ブック・クラブ ーコリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」アン・ウォームズリー  

こんにちは。 「プリズン・ブック・クラブ ーコリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」アン・ウォームズリー 刑務所で行われた読書会を通じた受刑者の変化を追ったノンフィクション。 刑務所での読書会を主催するボランティアをしている友人キャロルに、読書会を…

全く異質な2つの話を切り口に、日本人の死生観・信仰・国民性に深く切り込んだ超力作。「津波の霊たち」リチャード・ロイド・パリ

こんにちは。 2020年1月に文庫化されたばかりの「津波の霊たち」リチャード・ロイド・パリ 3.11の後に至る所で報告された「心霊現象」と、訴訟問題にもなった「大川小の悲劇」の二本柱で、全く異質なこの話を切り口に、日本人の死生観・信仰・国民性に深く切…

赦すことで得られる癒しの記憶を積み重ねること 「アーミッシュの赦し:なぜ彼らはすぐに犯人とその家族を赦したのか」

こんにちは。 久々のノンフィクション。 「アーミッシュの赦し:なぜ彼らはすぐに犯人とその家族を赦したのか」です。 ノンフィクションながら、胸に染みわたる作品。じっくり時間をかけて読みたい反面、ページをめくる手が止まらず、2~3時間で読み終わって…

〝引き裂かれた〟の意味を味わいながら読む重量級ノンフィクション 「引き裂かれた大地」スコット・アンダーソン

こんにちは。 スコット・アンダーソン著「引き裂かれた大地ー中東に生きる六人の物語ー」です。 ドキュメンタリー調のノンフィクションで、「引き裂かれた大地」に翻弄される6人の人生を克明に記録した作品。洋書を読むときと同じくらい、辞書やネットにかじ…

マヤ・アンジェロウ自伝

こんにちは。 2021年1冊目はこちら。 詩人・作家・人権活動家であるマヤ・アンジェロウの自伝「歌え、飛べない鳥たちよ」です。 自伝とはいうものの、小説のような美しさ。彼女の出世作だそうです。 マヤ・アンジェロウは1928年の生まれで、両親が離婚した後…

2020年に出会った印象深い本10選

こんにちは。 今年も早いものであと数日。2020年も素晴らしい本と出会うことができました。 ▼2019年の10冊はこちら dandelion-67513.hateblo.jp #良作ノンフィクション 1.「荒野へ」ジョン・クラカワー 山中で遺体となって見つかったエリート青年。彼の日記…

ジョン・クラカワー「空へ」

こんにちは。 ジョン・クラカワー「空へ」 数年前に「エベレスト」という、1996年にエベレストで起きた大量遭難事件について取り上げた映画がありました。当時映画館でも見て、映像の美しさ、極限状態での人間ドラマに圧倒された記憶があります。極寒の登頂…

「オオタカを飼うと自分が何を期待しているかがわかるぞ」 ヘレン・マクドナルド「オはオオタカのオ」

こんにちは。 ポパイのサマーリーディング3冊目。 dandelion-67513.hateblo.jp ヘレン・マクドナルド『オはオオタカのオ』 期待以上の内容で超~満足。雌のオオタカにまっすぐな愛を注ぐ中で、父を失った主人公の女性が救いを得ていく過程を描いています。た…

幸福は、分かち合えるものだけが、ほんものである。 ジョン・クラカワー「荒野へ」

こんにちは。 ジョン・クラカワー「荒野へ」 ポパイのサマーリーディング1冊目です。 dandelion-67513.hateblo.jp カポーティの「冷血」と同じようなものを期待して。 「冷血」がある程度時系列に事件を追っているのに対して「荒野へ」は「死」からの逆算で…